2010年10月27日水曜日

いつか来た道へ?

 衆議院議員北海道5区の補欠選挙の結果が出た。おおかたの予想通り、自民党・町田氏の大勝である。典型的なマスコミのお膳立て選挙であった。勝つべくして勝った自民党のコメントや、勝たせたマスコミのコメントは、それこそ、同じ原稿用紙を読んでいるかのような決まり文句が並べられている。

 政権与党の民主党に対する国民の失望感や不満、小沢氏など政治と金に関する問題でのあいまいさ、政権交代後の与党としての実績の少なさ、相変わらずの景気低迷、進展しない雇用問題等々、判を押したように同じ調子で論じている。そしてそれこそが、"国民の声であり国民感情である"という。景気が悪いのも、失業者が多いのも、政治が悪いのも、みんなみんな与党の民主党が悪いからであり、実効力のない菅内閣のせいであるとして、歩調を合わせて攻撃している。

 オイオイ待ってくれよ…である。私は、政党としての民主党や政治家としての小沢氏は好きではないが、今のマスコミや自民党をはじめとする野党の論調には納得できないものがある。むしろ、納得できないを通り越して危険な臭いをさえ感じているのである。このことについて、共産党員であるⅠ氏と話し合ったことがあるが、やはりその論調は自民党などと同じであり、特に小沢問題については、「あなたの考え方は、一部週刊誌の受け売りでしかないし、小沢の擁護論でしかない。」「国民の声や国民感情は無視してはならないし、証人喚問は当然である。」「国会の場でこそ、白黒をハッキリさせるべきだ。」と批判されてしまった。

 さらにI氏は、尖閣諸島の中国漁船問題にも及び、諸問題と関連づけて、与党の民主党がいかにあいまいな政党か、小沢氏の喚問要求がいかに正当な要求であるのかを、彼なりの論法で主張した。しかし私には、その主張にはマスコミや野党の主張との違いを、見つけることはできなかった。言い過ぎであるかも知らないが、付和雷同であるとしか、感じられなかったのである。共産党までもが冷静さを失っている事態は、非常に危険な状況になっていると言わざるを得ない。

 中国では、反日デモが繰り返されている。日本の国旗が焼かれたり、日本製品が壊されたりしている。尖閣諸島問題の抗議活動であるとのことだが、事態はそのような生易しいものではなくなっている。政府間交渉はおろか民間の交流にさえ、深刻な影響を与え始めている。ネットを媒介にして、あっというまに広がったデモは、反日から反政府へとその矛先が変わりつつあり、中国政府も慌て始めたようだ。

 デモの参加者は、大半が学生や若者である。中国政府に煽動された彼らは、真実の何たるかよりも洗脳された日本憎しの感情に踊らされていることに、気づいてはいない。そして、その感情こそが、中国国民の正義であると信じきっている。私は、国家的煽動とマスコミ的煽動の違いはあっても、国民を誘導しているということに関しては、日本も中国も似通ってきていると危惧している。自由な国である日本と、統制されている中国とを同時に論じることは、本質的に違っていると批判されるだろうが、私には、共通した危険性が含まれているとしか見えない。むしろ、日本のほうが、自由主義という美名にカモフラージュされているだけに、騙されやすいのではないかと思っている。

 今の日本は、危機的な状況にある。経済的な面ばかりではなく、国際的にも国内的にも不安定な状況にある。にもかかわらず、与党も野党も政争にあけくれてばかりで、国家の危機を顧みていない。小沢氏の証人喚問が実現しなければ、国会審議にも応じないなどその最たるものである。小沢氏の問題をそれほどまでに重視したいのであれば、中途半端な対応にしないで、刑事事件として司直の手で裁くべきであろう。国会は、裁判所ではないのだ。どうしても裁きたいのであれば、断罪を主張している議員自身が、資料をそろえ証拠を示して、自身で告訴すればよいことである。その理も分からないとは、情けない限りだ。国会を冒涜するのもいい加減にしてほしい。

 今の中国が、国力の増強を裏づけとして大国主義に陥っていることを、私たちは愚かなことと見過ごしてはならない。なぜなら、私たちは、先の大戦で同じ過ちを犯して大きな犠牲を払っているからだ。形は違っても、中国は、同じ過ちを犯そうとしているのである。そして、第二次世界大戦以上の惨禍が、この地球上にもたらされるかも知れないのだ。危機はすぐそこにまで迫っている。

 私たちは、心せねばならない。マスコミがあらぬ方向で歩調を合わせ始めたときには、大きな落とし穴が待っているということをだ。今のこうした状況を打開するためには、マスコミの正常化をこそ求める必要がある。そのためには、私たち一人ひとりが目覚めなければならない。そして、心のそこから、マスコミや政府に大きな声で訴える必要がある。………いつかきた道へ戻ってはならないと。戻りかけているのだと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

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